その時、私の前にめまいがするような、無慈悲な光景が迫ってきたのである。
おい嘘だろ。嘘だと言ってくれよ。
そこには個人経営のラーメン屋を吹き飛ばすようなチェーン店の大群ができていた。確認できるだけでも、ラーメン屋、バーミアン、夢庵、牛角、銚子丸、コンビニ、中華料理、、こんなのは自分がいた時にはなかったはずだ。こんなの勝てっこない。。。覚えのない近代化した大通りに絶望を覚えた。
もうこの辺からは、頑張っててくれ!ラーメン屋のおじいちゃん!という心の底からのエールを贈りながら小学校に向かった。あのラーメンが余計に尊く思えてくる。
はっ。小学校だ。私の記憶が正しければ、ラーメン屋は小学校の向かいの道にある。どの面かは覚えていないが。
現場に緊張が走る。
こちらが大野小学校。私が当時通っていた小学校から一番近い小学校なのかな?そんな位置関係。
とりあえず、この通りにはなさそう。次の角を右に曲がったところが怪しいな。
よし。この道だ。
!?
やばい。それらしき建物が見つかった。もうこの時にはせめて店の形だけでも拝みたいという気持ちだった。ここなのだろうか。
いや違う。消えかかったテントの文字が英語だ。ラーメン屋は別の場所にある。
こういうでかいファミマとか見るとどんどん希望が薄れていくよ。。
この通りにもなさそう。
とうとう最初に出た通りに来てしまった。ラーメン屋は見つからず。
では自分の記憶が間違っていたのだろうか。ここまで来てあっさり引き返すことはできない。地元の人に聞いてみよう。
先程の場所に戻ってきた。やはりここが怪しいんだよなあ。お隣の美容室の方に聞いてみることにした。
likka:「すみませ〜ん」
美容院の方:「はい。」
likka:(よかった、優しそうな方だ)「少しお伺いしたいことがありまして、、。この近くに昔ラーメン屋さんというか、中華料理屋ってなかったでしたっけ。」
美容院の方:「ああ〜。そこの?ありましたよ。」
likka:「僕、この近くに昔住んでいて、あのラーメンが好きでまた食べたくなって来たんですけど、もうなくなっちゃったんですか?」
美容院の方:「そうなんですよ。5、6年前にやめっちゃってね。この前まで建物も残ってたんだけど、今もう空き地になってるでしょ?」
likka:「あ、そうだったんですか。。残念です。その店の跡地はすぐ近くなんですね。突然すみませんでした。ありがとうございました。」
カランコロン。
ということで、、、、、
すっかりラーメンの口になっていた私達は、悔しいけどさっき見つけたでかいラーメン屋にきた。せめてもの抵抗で「肉そば」には手を出さず、シンプルな醤油ラーメンを。正直味は覚えてない。無言でラーメンをすすっていた。
あのラーメンはもう食べれない。ラーメン屋は建物ごとなくなってしまった。当時の記憶と相まって自分の中で「楽しかった味」というよくわからない感情になっている。これを「エモい」とは表現したくない。
お店の方には伝えたかったなあ。ありがとうという気持ち。「美味しかった」
これは帰り道で見つけたアパート。壁には『Let it be』のジャケットが。Beatles 最後のアルバム。旅の終わりを告げているようだった。
この記事を読んでくれた方は、是非あなたにとって忘れられない味を、改めて思い出してください。もしかすると、もう一生口にすることができないかもしれない。どうか、大切に。
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